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Sato's blog >>> 2006

 #01 新しい年を迎えて 2006/1/23

  正月気分も抜け、みなさんも日常生活に戻られていることと思います。昨年
  の暮れから建築業界のみならず、広く世間を震撼させている耐震偽装問題。
  この問題から見えたことは、建物を建てる側、建物を購入する側にとって、
  それは生涯に何度もあることでは無い重大な行為であること。
  しかし一方の建物を造る側、販売する側にとっては、それは生活の為の仕事
  であり、数ある事業・業務の中のひとつでしか無かったということ。
  人命に関わる最優先されるべきことが、数の中に埋もれ、慣れ合い、利益が
  優先されてしまったという事実。

  この問題は、技術ではなくモラルを問われていると感じます。日々の仕事に
  慣れがあってはいけない。私たちは改めて肝に銘じ、専門家としての仕事を
  して参ります。



 #02 耐震偽装問題について 2006/2/3

  建築業界の根底を揺るがす問題が発覚し、多くの人に影響を与えている。
  こともあろうに構造の専門家である構造設計士が、最低限の安全すら守らず
  構造計算を改ざんし、確認検査機関、意匠設計士、施工側も知ってか知らず
  かこの問題を見落としてしまう。マスメディアは一斉に設計・施工・売主・
  検査機関の問題点を提起し、その責任は国にもあると言わんばかりの報道。
  『建築業界の人間は皆ウソつきなのに、国が厳しく管理しないとは何事だ』
  そう言われているようで、私には情けなく聞こえる。

  どんなに専門知識に精通し豊かな経験を持った技術者であっても、道徳心と
  プライドを持たなければ専門家である意味は無い。これからの業界が、たと
  えば法規制によって厳しく管理されたとしても、専門家である以前にモラル
  に欠ける人間は、また同じ事を繰り返すのだと思えてならない。
  この事件の関係者ばかりでなく、業界全体が今、モラルを問われている。



 #03 管理と監理 2006/2/10

  この言葉はいずれも『カンリ』と読みますが、その責任の範囲は全く違って
  います。設計図書と呼ばれるものには図面だけでなく、文字で書かれた仕様
  書や見積書、メーカーが発行する取扱説明書なども含まれています。
  そもそも設計者が考えること全てを図面化、あるいは文書化することは困難
  で、その為に現場では建物の仕上がりに応じた打ち合わせを行い、イメージ
  を固めていく作業が行われます。

  管理者とは、現場の工程・品質・予算・資材・業者・安全を管理し、それを
  記録し報告を行う人のことであり、監理者とは、現場が設計者の意図に沿い
  設計図書に従って正しく施工されているかを確認・指導・承認し、かつ法的
  にも責任を負う人のことです。

  時々、管理者・監理者と称する人がいったい何をカンリしているのか、疑問
  を感じる現場があります。工程や予算の管理ばかりに気を取られている管理
  者、現場では一度も会う事の無い名前だけの監理者、など。
  建築主から依頼を受け、第三者として監理を行う仕事は、本来なら二重のチ
  ェック機能を持つものであるはずなのに、管理者や本来の監理者の仕事まで
  背負わなければならない現場は、決して少なくありません。



 #04 技能と技術 2006/2/17

  建築に係わる人間を、多くの人は『技術者』と呼びます。しかし実際、建築
  業界には『技能者』と『技術者』がいます。
  技能とは繰り返し行い熟練する事によって身に付く技であり、木造建築にお
  いてノミやノコギリを使いこなすなど、古くから日本建築を支えてきたもの
  です。技術とはデザインであれ法律・構造であれ、その判断を自身の責任で
  行い、決定できる事です。技能と技術の違いは、そこに判断があるかどうか
  だと思っています。

  耐震偽装の問題では様々な登場人物がいますが、誰が判断し誰が決定したの
  か、とても曖昧な印象を受けます。みんなが責任逃れをし、その挙句に国の
  責任だと言う。
  建築はその計画から竣工に至るまで、何ヶ月かの時間を費やします。そして
  その段階ごとに様々な種類の人間の判断、決定が積み重ねられるのです。
  意匠設計者、構造設計者、確認検査機関、ゼネコン、これだけの人間がいて
  誰かが決めた、誰かが言った、誰かがやった、自分ではない。
  人の人生を左右する事にもなり得る仕事をしていながら、技術者としてそこ
  に自分の意思が無い。そんな、技術者とも技能者とも呼べない人間に仕事を
  任せてはいけません。



 #05 TSOの弊害 2006/2/24

  建築主からの依頼で、ある会社が建築した建物の調査を行いました。工事段
  階の写真が残っておりそれを検証したところ、構造部材の不足や図面に指示
  されているのに施工されていない箇所がある等、実にさまざまな事実が読み
  取れました。
  しかしこの会社は『当社はちゃんと施工しているし工事記録もきちんと管理
  しています』と言わんばかりに、この写真を提出しているのでした。
  『当社はISOの認証を受けていますから社内検査シートも万全です』との
  事でそれを拝見すると、
      鉄筋の配置と数 ・・・○適合
      構造梁の施工状況・・・○適合
  など各工程におけるチェック記録が記載されており、担当者とその上司、更
  にその上司と思われる何人もの認証印が押されていました。
  しかし写真を見る限りでは、
      鉄筋の配置と数 ・・・×不可
      構造梁の施工状況・・・×不可   これが実際のようです。

  ISOを取得する企業が増え、様々な書類やマニュアルの整備が成されまし
  た。しかしいつからかその本来の目的が見失われ、現場の確認はチェックシ
  ートを埋める仕事になり、認証印はチェックシートが埋まっているかを確認
  する作業となり、工事記録は決められた枚数の書類や写真が揃っていれば完
  璧であるという『勘違い』を引き起こしているような気がしてなりません。
  ISOとは何なのか?
  建物の工程ごとに、確実に積み重ねられていく書類。引き渡しの際には、何
  層にも重なった『安心』であるはずの記録。なのに何故このような不具合の
  ある建物が出来上がってしまうのか。
  何とも不思議なISOです。



 #06 家を建てるということ 2006/3/17

  建築の中でも住宅はとても難しいものだと思います。何故なら住居は誰にで
  も必要であり、住む人間が個々にこだわりを持っているからです。
  寝室は洋室がいいか和室がいいか。キッチンは対面型か独立型か。室内の壁
  はどんな素材がいいか。
  最近では、住宅を紹介するテレビ番組などの影響もあり、実に独創的な要望
  を出してくる建築主も増えています。

  設計はクリエイティブな部分、法律に規制される部分、物理・化学・生物・
  気象・人類工学などの集大成です。特に法律行為の部分に関しては、内容が
  年々複雑になってきています。しかし一方、建築に携わる側の法律に対する
  知識や構造の安全に対する知識が不足しているのも事実です。
  建築とは数多くの法規制の中でデザインし、構造の安全を検証しながら建築
  主の独創的な要望に折り合いを付け、完成させるものだと思います。



 #07 別荘バブルにひと言 2006/3/31

  かつてバブルが弾け、随分と多くのリゾート開発業者が倒産しました。たく
  さんの施設が人手に渡り、多くのペンションも閉鎖されました。別荘の値段
  は下がり荒れ果ててしまった地域もありましたが、最近はまた活況を取り戻
  しつつあるようです。
  2007年問題の先取りのように、最近は別荘の建築が増えており、休暇や
  気分転換のため、あるいは定年後の永住先として、小さくても良いから豊か
  な自然の中で楽しく健康に暮らせる家を建てる。そんな人が増えています。

  私は検査業務のためある別荘地へよく出向きます。建築主は首都圏にお住ま
  いの方が多く、施工は地元の工務店、あるいは地元の職人である現場が大半
  を占めています。そのような現場は現場管理が行われてはいるものの、施工
  マニュアルが整備されていない事が多くあります。
  私が目の当たりにするのは、地元の職人が正しいと思っている施工手法が、
  実は現在の法規定に則っていないものであったり、法知識の不足により重大
  な瑕疵となりかねない施工が行われていたりする事例が少なくない事です。
  別荘と言えども、建築費は安い物ではありません。またその土地柄、建築確
  認申請の義務付けが無い地域も多く、この点も建築関係者の法規制に対する
  意識の薄さに影響しているのでしょう。

  別荘を建てる。そんな計画を持っている方にひと言。その家の品質の確保は
  大丈夫ですか?



 #08 一枚の写真から見えるもの 2006/4/22

  日頃、たくさんの建築現場の写真を目にします。検査の記録や職人が写した
  もの、建築主が撮ったものなど。また最近では、自分の家が完成するまでの
  記録をブログで紹介する人も増えました。

  そのような何気ない写真の中に、実は重要な事柄が写っていることがありま
  す。それが検査記録あるいは施工者側が撮った写真の場合は大抵、その重要
  な事柄に気付かずに保存されたもの。建築主が撮った写真の場合は、思い出
  の記録として残しておきたい気持ちから、あるいは何となく不安でいざとい
  う時のために、という思いのどちらかである事が多いと感じます。

  たとえ現場に毎日通ったとしても、素人にはわからない事ばかりであるのは
  当然の事です。見た事を正確に伝えるのは難しくとも、写真はたった一枚で
  も雄弁に事実を語ってくれます。みなさん、積極的に写真を撮りましょう。



 #09 企業姿勢のいろいろ 2006/6/5

  社会的な事故・事件が発生した時、それを引き起こしたのが企業である場合
  は、その企業姿勢が問われ、媒体で叩かれる場面を多く目にします。
  企業姿勢とは、企業理念であり企業の生き様です。と言っても、企業に人格
  がある訳ではないので、実際には企業を運営する人達の理念であり、生き様
  となります。

  物事が問題無くうまくいっている時、大抵の企業人は、会社がどんな素晴ら
  しい理念を持ちそれを追行しているか、あるいはその製品がどんなに優れた
  ものであるかをPRします。それは企業として当然の事で、それが営業であ
  り企業を維持運営するための根源です。
  様々な企業の理念を机上に並べ、あるいは製品を並べ比較をしてみる。各社
  の特色を見極めようとする場合、これも有効な方法かも知れません。
  しかしもっと重要なのは、万が一その製品に問題が生じた時、製造者の責任
  を問われた時に、その企業がどのような解決の姿勢を示すのか、にあると感
  じます。

  住宅建築という業界において、問題が発生した時の実に様々な企業の姿勢を
  私は目の当たりにしてきました。
  提起された問題についてあらゆる可能性を考慮して検証を行い、結果OKで
  あった部分はそれを主張し、NGであった部分はそれを認め、施工者責任を
  追行すべく、速やかに解決の為の方針を出す会社。
  あるいは検証の結果がNGであっても、明解には認めず問題をすり替えよう
  とする会社、などなど。
  共通しているのは、『失墜した顧客との信頼関係を取り戻したい』との発言
  がどの企業からも出される事です。
  その発言が真実に聞こえる時もあれば、会社を守る事が見え見えで鼻につく
  時もあります。



 #10 現場は誰が確認するのか 2006/9/28

  仕事柄、いろいろな会社のいろいろな検査に出向きます。建築の検査には段
  階があり、それぞれの工程でどの部分を確認するかのポイントがあります。
  検査で不適格であった事項については、是正後の写真を提出してもらい確認
  する、あるいは再検査を行う事になります。
  従って『検査による是正』という工程上の時間のロスと、一項目の検査に複
  数回現場に出向く事になる私自身の時間のロスを防ぐため、『次回の検査で
  はビスの間隔が検査の対象ですから間違いなく施工しておいてください』な
  ど、あらかじめポイントを現場に伝えておく事があります。

  正しい知識を持って正しく施工を行っている、あるいは多くの人間の目を通
  しているため、一回の検査で何の是正項目も無く合格する現場もあります。
  また、先に伝えていたポイントを優先したため、その他の検査項目の部分が
  間に合わなかった現場もあります。
  そして悲しいかな、伝えたはずのポイントすら守られていない現場もありま
  す。これはとてもがっかりします。

  しかしもっとがっかりする事は、そのような現場の監督の発言です。
  『気が付きませんでした』
  日頃から手持ちの現場をきちんと確認していて、たまたま見落としてしまっ
  た事を私が発見したなら、私もおそらく現場監督も『今の段階で発見出来て
  良かった』
と胸を撫で下ろすことでしょう。
  しかし、予め伝えていた事が出来ていないという事はうっかり見落とすレベ
  ルではなく、全く確認をしていないという事が誰の目にも明らかです。
  そんな監督に接するたび、現場監督とは何をする人なのかわからなくなりま
  す。あなたの仕事は何ですか?



 #11 ツーバイフォー工法の今 2006/12/6

  
私が建築の仕事に就いてから30年の月日が経ちました。この時間の経過と
  同じように、ツーバイフォー工法の指針とも言える日本ツーバイフォー建築
  協会も設立30周年を迎えており、加えてツーバイフォー住宅の着工戸数が
  10万戸を突破した今年は、ツーバイフォー工法にとって記念すべき年とな
  っています。

  ひとつの新しい工法が導入され、日本全国に定着するのに四半世紀。長い歴
  史の中では短い年月なのかも知れません。しかしこの短い時間の中で、新し
  い構造・新しい技術によって10万戸の建築に至った苦労は、大変なもので
  あったと思います。
  蕎麦が普及するのに石臼の目立職人が日本全国に存在する事が必要であった
  ように、ツーバイフォー工法が日本全国に広まり10万戸に及ぶ家を建てる
  には、10万戸分の設計図面が描ける建築士と、10万戸分の建て方の技術
  を持った職人の存在があった、という事です。

  ツーバイフォー工法が日本で正式にオープンとなった当初は、構造図を描け
  る人がいない、建て方ができる人がいない、構造材の入手ルートが無いなど
  多くの問題がありました。
  ところが30年経過した現在では、在来工法と呼ばれる日本の伝統的な木造
  工法と肩を並べ全国に定着した事は、感無量と言えます。

  しかし、この30年で構造の理解者・判断者が本当に育ったのか、確かなフ
  レーマーが本当に育ったのか、疑問も残ります。
  10万戸達成の裏で、多くの欠陥が存在しなければ良いと願っています。